
エンゲージメントの高い若手は「リーダー/幹部層」や「上司」を意識している
昇任意欲があるメンバーは、エンゲージメントが高い
グラビス・アーキテクツが実施した、地方公共団体を中心に行政機関勤務者(約1,000名)を対象とした「行政機関勤務者のエンゲージメントに関する調査(2024)」では「昇任意欲あり」と回答した職員は、その他の職員と比較して「現在の組織で働いていることに満足している(現状満足度)」という項目の満足度が高い傾向にあります。(図1)

同様に、「今後も現在の組織で働き続けるつもりである(継続就業意向)」といった項目も、他の職員と比較して高くなっており、将来にわたって組織の牽引を考えて働いている点からも、エンゲージメントが他の層と比較して高いと考えられるでしょう。
また、現状満足度と「リーダー」や「上司」の項目に相関がみられる
一般行政職員で昇任意欲がある「25~34歳」の現状満足度に対して、どの項目と関連が強いか分析しました。(図2)結果を見ると、相関が高い上位10項目のうち、半数以上がリーダーや上司に関係するものでした。
1位(同率):自組織全体を率いているリーダー/幹部層は、魅力的である
1位(同率):私の上司は私の仕事ぶりや成果などの事実をもとに評価している
3位:私の上司は私の仕事ぶりや成果をしっかり見ていると感じられる
5位:私の上司は仕事の成果や品質だけでなく、私の成長やキャリアも意識した働きかけをしていると感じる
7位:自組織全体を率いているリーダー/幹部層は、近づきやすく気軽に話せる
9位:私の上司とは気兼ねなく会話や相談ができる

なぜ上司を意識した項目が多いのでしょうか。次に昇任意欲の有無は問わずに、一般行政職員の「25~34歳」の層に「現在の組織で働いていることに満足している」という現状満足度に影響を与える項目を確認しました。
一方、満足度が低いのは「組織理解」や「キャリア」に関する項目
事業やサービスへの納得感、職場の人間関係は良好の結果
一般行政職員の「25~34歳」の層の現状満足度に相関を持ちながら、かつ満足度も高い項目は、3つありました。(図3)
● 業務上関係する他の職場のメンバーと議論・検討しながらよりよい仕事をできていると感じる
● 私が現在所属している職場の同僚は、仕事にまじめであり信頼している
● 自組織全体でおこなっている事業・サービスは社会や地域に役に立っている

これらの結果から、事業やサービスへの納得感、職場の人間関係の良さが伺えます。
ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)やキャリア・処遇についての満足度が低い
一方で、一般行政職員の「25~34歳」の層の現状満足度に相関を持つものの、満足度が低い項目は4つありました。(図4)
● 自組織のミッション・ビジョン・バリュー(MVV)に共感している
● 自組織全体を率いているリーダー/幹部層は、魅力的である
● 自組織では複数のキャリア選択が可能である
● 自身の現在の処遇(給与・職位など)は自身の働きぶりやスキルに見合っている

組織のミッション・ビジョン・バリュー(MVV)への共感や上司、キャリアや処遇などの満足度が低い結果です。若手層は、足元の業務からその先の組織像や自身のキャリアや処遇に不安を抱えていることが伺えます。
若手のエンゲージメント向上のため、幹部・上司の「リーダーシップ」が重要に
幹部層が組織全体のMVVを掲げて共有していく
組織のリーダー/幹部層が、組織全体のMVVを掲げて共有していくことが非常に重要です。上述したとおり、目の前の業務である事業やサービスへの納得感、職場の人間関係の良さは満足度が高い結果です。満足度が高い現在の業務が、組織のMVVの何に繋がっているかを共有し、共感を生むことができればエンゲージメントを一層高めることができるのではないでしょうか。
現場職員を部下にもつ上司は、幹部層と現場をつなぎながら部下の成長を促す
現場の上司は、組織の幹部層が掲げたMVVを伝えて、実践させることが重要です。しかし、大規模な自治体では、幹部層が掲げたMVVが現場の業務とかけ離れて感じられることもありえます。そのような場合は、自分たちの部門や部署のMVVを掲げ、促すことも必要です。
キャリアや処遇について満足が低い場合は、上司が持つ経験を共有し、キャリアのロールモデルとしての役割を果たすことが重要です。特に昇任意欲があるメンバーは、自分なりのキャリアプランを持っていることが考えられます。定期異動や人事制度など、現場で変化を起こすことが難しいことはあるものの、上述した組織や部門のMVVの共有、仕事の評価を土台としながら、本人の希望と上司の意向をすり合わせることが、エンゲージメントの維持・向上のキーになるのではないでしょうか。